、お前の居る屋上へ上っていくから、すこし待って居てくれ。しかしお前も、こんどというこんどは余程《よほど》懲《こ》りたと見え、屋上から、蜘蛛に見まがうような擬装《ぎそう》のマイクと高声器をつり下げて、わしに話しかけるなんて、中々機械化してきたじゃないか、はははは」
「いや、ちとばかりソノ……」
「しかし、この無細工な蜘蛛を屋上からこの人通りの多い通りに吊《つ》り下ろすなんて、やっぱりお前は、垢《あか》ぬけのしないこと夥《おびただ》しい。この次からは、もっといい智慧を働かすがいい」
褒《ほ》められたと思った醤は、とたんにぺちゃんこにやっつけられた。
さて、ここは屋上である。例の洋酒店のあるビルの屋上であった。
のっそりと、非常梯子《ひじょうばしこ》からあがってきたのが金博士であった。非常梯子の上り口に立って、うやうやしく挙手《きょしゅ》の礼をして立っている二人の白いターバンに黒眼鏡に太い髭《ひげ》の印度人巡警《インドじんじゅんけい》! 脊の高い瘠《や》せた方が醤買石《しょうかいせき》で、脊が低く、ずんぐり肥っている方が、醤が特選して連れてきた前途有望な瓦斯師長《ガスしちょう》燻精《く
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