か。それは本当じゃな。男の言葉に二言《にごん》はないな――というて相手がお前じゃ仕様《しよう》がないが……」
といいながら、博士は飾窓から顔を放して腰を真直《まっすぐ》にのばしたものだから、さっきから垂《た》れ下っていた大蜘蛛が一揺《ひとゆ》れ揺れると、博士の顔へぴしゃと当った。さあたいへん、危《あやう》いかな博士の一命! 生かまたは死か?
2
……筆勢《ひっせい》あまって嚇《おど》し文句を連《つら》ねてはみたが、ここで金博士が、間髪《かんぱつ》を容《い》れず、顔にあたった大蜘蛛《おおぐも》を払いのけ、きゃあ[#「きゃあ」に傍点]とかすう[#「すう」に傍点]とかいってくれれば、作者も張合《はりあい》があるのであるが、当の博士は、別に愕《おどろ》きもなにもしない。甚《はなは》だ張合いのない次第であった。
愕くどころか、博士は、矢庭《やにわ》に手をのばして、その大蜘蛛の胴中《どうなか》をつかんだものである。
すると、ガラガラと、ラジオの雑音のようなものが聞えた。
金博士は、つかまえた大蜘蛛を口のところへ持って行き、声を一段と低くして、
「おい醤買石、今すぐわしは
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