というのでは、また何か大それた無心じゃろう」
金博士は、やっぱり前跼《まえかが》みになって、飾窓の中をのぞきこみながら口を動かした。博士は、まさか頭の上に忍びよったる大蜘蛛と話をしているのだとは気がついていない様子に見えた。
「やあ、そのとおり、それが図星《ずぼし》でございますよ。余《よ》――いや小生《しょうせい》はこのたびぜひとも博士《せんせい》にお願いをして、毒瓦斯《どくガス》をマスターいたしたいと決心しまして、そのことで遥々《はるばる》南海の孤島《ことう》からやって参りました」
「毒瓦斯の研究か。そんなむずかしい金のかかるものは、お前の柄《がら》じゃないぞ」
「いえ博士《せんせい》、そう仰有《おっしゃ》らないで、是非にお願いいたします。今こそ孤島に小さくなっていますが、昔日《せきじつ》の太陽を呼び戻すには、猛毒瓦斯を発明し、その力によってやるのでないと全く見込みなしとの結論に達し、博士にお縋《すが》りに参りました。ぜひともこの醤を哀《あわ》れと思召《おぼしめ》し……その代り、お礼の方はうんときばり、博士のお好みのものなれば、ウィスキーであろうとペパミントであろうと……」
「そう
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