て、恥かしい。それに給仕の高木がそれを察して、背後の席で、にやにや笑っているように思えて、さらに落着けない。
「おい高木。これをやるから、映画でも見て来い。見てしまったら、あとは帰ってもいいぞ」
 高木を追払ってしまうと、余は、事務所の入口に、内側から鍵をかけた。もうこれで、誰も邪魔をしないであろう。余は、そこで百円紙幣を出して、机の上に置いた。この百円紙幣と、話をしながら、依頼の件について出願用の明細書を書こうというのであった。
「本願の、発表の名称は、どうしますかね」
「そうですわね、三本腕方式は、いかがでしょうかしら」
「三本腕方式ですか。いいですねえ。ええと。三本腕方式と」
 余は、そのように書きつけた。
「さて、その次は、その三本腕を、どこに取り付けるか、つまり取り付けの場所のことですが、なにか名案はありませんか」
「そうですね、まず、あなたから、先におっしゃってください」
「そうですね、臍の上はいかがでしょう。臍の上に、第三の腕を取りつけるのです。臍は、身体の中心ですからね。釣合の上では、そこへ取り付けるのが、一等いいと思います、かなり重い荷物をもつにも、そこにあるのが便利
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