されたものであったかと、余は始めて悟ったことである。
「ちょっとお待ち下さい。人間の腕を、もう一本殖やすということが、果して出来ましょうか。どうも解せませんが……」
「出来なくてどうします。実現できないことは、発明としては無価値だ」
客は、あべこべに講釈ぶった。
「しかし、そんなことが出来ますかなあ。まず、どういう具合にそれを行うのか実施様態をご説明願いたいもので……。つまり腕を、もう一本殖やすについては、どういうことをして、それを仕遂げるか」
「それは、いえませんよ。実施の様態をいえば、せっかくの秘密が、すっかり洩れてしまう。それは出来ない」
「しかし、特許出願するからには、実施の様態についてお示し下さらなければ、発明の説明に困ります。特許出願するについては、明細書というものを書かなければならんのですからね」
「秘密なことはいえない」
「つまり、どこにどういうふうに、その新規の腕を取り付けるかということについて、実際的な内容を説明しないと……」
「そんなことは、書かんでもいいです。ただあんたは、拙者のいったとおり、従来の人間は、ただ二本の腕だけを持っていた。そこへもう一本、腕を殖や
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