方へ曲げた。すると長く伸びていた機械腕は、ばさっと音をたてて、氏の頭のうえに畳まれてしまい、元のような頭巾になってしまった。
「ほう、素晴らしいご発明ですね」
 と、余は心から讃辞を呈した。
「しかし、三本目の腕を、頭に取り付けるんだとは、考えつきませんでした」
「寒いときは、三木目の腕を使うに限るですぞ。なにしろ機械腕のことだから、出し放しにしておいても、寒くなしさ。首の運動次第で、こいつがどうでも自由に動くのです。なかなか具合がよろしい。あまり具合がいいものだから、だんだんものぐさくなって、どちらへも失礼していたというわけだが、借金ばかり殖えてね」
 借金? という言葉に、余は、大切なことを氏に報告するのを忘れていたことに気がついた。
 出願公告決定のこと。それから、この特許権が二百万円に売れそうなこと。いや、もう大丈夫売れる。あの金巻、後頭両氏に、田方氏がいま頭にかぶっている機械腕を見せたら、そのときは、もう否も応もなしに、「買ったッ!」と叫ぶことであろう。
「田方さん。あなたの発明が、公告になりましたよ」
 と、私は詳細を早口で喋った。
「そして、あなたの発明を、ぜひ売ってくれ
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