」ルモノナリ。仍リテ両者ハ根本的ニ構造ヲ異ニスルモノト謂フベク、従テ本願ハ、援用立像ヲ以テ拒絶セラルル理由ヲ発見シ得ザルモノナリ。
右意見侯也
[#ここで字下げ終わり]
つまり余の言いたいことは、千手観音の腕は、いずれもその付け根が腕のところの関節へ集まっている。ところが、こっちの出願のものは、腕関節のないところへ取り付けるのだから、これは根本的に構造が違うのである――と意見を述べたのであった。
早速この意見書は、タイプへ回した。夕方には、それが出来てきたので、ただちに郵便局へ出掛け、特許局宛書留で出した。
これで黒白が決定しないとすると、この出願事件は、大体脈がなくなったも同様だ。
×月×日 また雪
万歳。
ついに意見は徹った。
特許局から、公告決定の通知が、舞いこんで来た。
[#ここから2字下げ]
公告決定通知
本願ハ拒絶ノ理由ヲ発見セザルヲ以テ、公告スベキモノト決定セリ
[#ここで字下げ終わり]
輝かしい日だ、雪は降りしきっているが……。『多腕人間方式』が、いよいよ一つの財産権となったのだ。
特許登録されるまでには、これから六十日間の公告期間を経過しな
前へ
次へ
全27ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング