両手でその玉をぎゅっとつかもうと――。
「うわっ」青二は、いそいで手を引くと、その場にとびあがった。玉をつかむ前に、掌《てのひら》が、ごそごそとする毛のようなものにふれたからであった。
よっぽどそのへんでやめて、逃げだそうと思ったけれどもともと青二は、ものずきなたちだったから、ふみとどまった。そしてもう一度、その二つの玉の方へ両手をもっていった。
「あ、――」ふしぎな手ざわりを、青二は、感じた。毛の密生した動物の頭と思われるものに、ふれたからであった。
ふしぎな発見
「……猫の頭のようだが、しかしそんなものは見えないではないか」なんという気持ちのわるいことだろう、と青二《せいじ》は思った。
しかしこのとき彼は、さっきとはちがって、もうよほど落ちつきをとりもどしていた。もう一度その毛深《けぶか》い動物の頭にさわり、それから、おそるおそる下の方へなでていった。
全くおどろいた。たしかに、猫と思われるからだがあった。しっぽもあって、ぴんぴんうごいていた。足のうらには、たしか猫のものにちがいない土ふまずもあるし、爪もついていた。しかしそれは全く見えないのであった。
青二は、い
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