大きなおどろきにぶっつかった。鏡にうつった青二の顔は、うすぼんやりしていた。校服《こうふく》はちゃんとはっきりしているのに、くびから上が、ぼんやりしているのだった。
やっぱり自分も、のぼせ目となったのかと思い、青二は、いくども目をこすって、鏡の中にうつる自分の顔を見なおした。
だが、そのかいは、なかった。いくど見なおしても、彼の顔はぼんやりしていたし、両手をうつしてみても、やはりそれもはっきりうつらなかった。
「えらいことになった」と、青二はその場にうずくまってなげき悲しんだ。
なぜそんなことになったのか、青二には、わからなかった。あの見えない猫と同じようなふしぎな現象《げんしょう》が、今自分のからだの上にあらわれて来たのだ。
「これからどうなるだろうか。自分もあの猫のように、からだがすっかり見えなくなってしまうのではあるまいか。ああ、そうなったら、もう生きてはいられない。自分は化け物あつかいされるだろうから……」
青二は、ここで、重大な決心をしなければならなくなった。このままうちにいて、化《ば》け物あつかいされるか、それとも誰にも見つからない世界へにげていってしまうか。
い
前へ
次へ
全22ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング