大きなおどろきにぶっつかった。鏡にうつった青二の顔は、うすぼんやりしていた。校服《こうふく》はちゃんとはっきりしているのに、くびから上が、ぼんやりしているのだった。
 やっぱり自分も、のぼせ目となったのかと思い、青二は、いくども目をこすって、鏡の中にうつる自分の顔を見なおした。
 だが、そのかいは、なかった。いくど見なおしても、彼の顔はぼんやりしていたし、両手をうつしてみても、やはりそれもはっきりうつらなかった。
「えらいことになった」と、青二はその場にうずくまってなげき悲しんだ。
 なぜそんなことになったのか、青二には、わからなかった。あの見えない猫と同じようなふしぎな現象《げんしょう》が、今自分のからだの上にあらわれて来たのだ。
「これからどうなるだろうか。自分もあの猫のように、からだがすっかり見えなくなってしまうのではあるまいか。ああ、そうなったら、もう生きてはいられない。自分は化け物あつかいされるだろうから……」
 青二は、ここで、重大な決心をしなければならなくなった。このままうちにいて、化《ば》け物あつかいされるか、それとも誰にも見つからない世界へにげていってしまうか。
 い
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