る奇妙な方法を考えつきました。
「はははは、これなら、きっとうまくいく」
「なかなかおもしろい方法ですね」
「いや、考えてみれば、やっぱり方法があるものですねえ」
 三人は、たいへん、うれしそうでありました。その喜んでいるありさまから見ると、豆潜水艇をぬすみだすのになかなかいい方法を考えついたようです。いったいそれは、どんな方法であったか、それはしばらくおあずかりにしておくことにしましょう。
 それから、十日ほどすぎました。そこで話は、造船所のすみにころがっている豆潜水艇のことになります。
 この潜水艇は、すっかり出来あがっていました。艇内には、すでに食べものや、水や、ハンモックなどもつみこまれ、いつでも出かけられるようになっていました。ただ、この豆潜水艇は、まだ台のうえにのっています。艇の下をささえているくさびをはずせば、この潜水艇は、台の上をよこすべりして、ぼちゃんと海へおちて、うかぶようになっていました。つまり、あとは進水式だけがのこっていたのです。
 進水式のことを、青木学士も春夫少年も、どんなにか、待ちこがれていました。豆潜水艇は、進水をすませると、そのまま港を出かけることになっていました。もちろん、乗組員というのは、艇長《ていちょう》の青木学士と、それから副艇長の春夫少年の二人きりでありました。
 それは、いよいよ明日が、待ちに待った進水式だという、その前日の夜のことでありました。青木学士と春夫少年は、潜水艇の中にはいって、しきりに艇内をとりかたづけていました。
 そのとき、このまっくらな造船所へどこからやってきたのかくろい服をきた、十四五人のからだの大きい人が、しのびこんでまいりました。
「あ、部長。あれが潜水艇ですよ。青木学士の発明した世界一小さい潜水艇は、あれなんです」
「おお、あれか。あのぼーっとあかるいのは、なにかね」
「あれは、潜水艇の出入口の蓋《ふた》があいているのです。艇内にはだれかがいて、電灯をつけているから、それが出入口のところから外にもれて、あのように、ぼーっとあかるいのです」
「ああ、そうかね、トニー。しかし、中に人がいるのでは、ぬすむのに、つごうがわるいじゃないか。なぜといって、そうなると、きっと相手がさわぎだすにちがいないからね」
「しかたがありません。すこし荒っぽいが、あいつらを、ねむらせてやりましょう」
「ねむらせるといっ
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