憲はともかくも、帆村自身はなんとか再び例の秘密工事場に達する路を発見したいものと日夜そればかりを考究した。
それから一週間ばかり後のことであった。
帆村の熱情が神に通じたのか、彼はゆくりなくも重大なる事柄を思い出した。
それは例の工事場で働いていたとき、その中ではないが、どこかその附近でもって、しきりに杙打《くいう》ち作業をやっているらしい地響《じひびき》を聞いたことであった。
それについて、彼は今まですっかり忘れていた重大なる手懸りを発見したのだ。それはその杙打ちの音が、とんとんとんとんという具合になめらかに行かず、或るところで引懸《ひっかか》るようにとんとんとんととんという特徴のある音をたてることであった。歯車の歯の一つが欠けているのか、或はまたロープにくびたところでもあるのか、とにかく不整な響を発するのであった。
「こいつは締《し》めた。もっと早く気がつけばよかったんだが」
帆村は躍りあがって悦《よろこ》んだ。彼はとんとんとんととんという不整音《ふせいおん》の地響を、どう利用するつもりであろうか。
彼はすぐさま家を飛びだして、帝国大学の地震学教室に駈けつけた。そこで教
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