東京要塞
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)空《から》っ風
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)築地|夜話《やわ》であった。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ふのり[#「ふのり」に傍点]は使わず、
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非常警戒
凍りつくような空《から》っ風が、鋪道《ほどう》の上をひゅーんというような唸《うな》り声をあげて滑《すべ》ってゆく。もう夜はいたく更《ふ》けていた。遠くに中華そばやの流してゆく笛の音が聞える。
丁度《ちょうど》そのころ、築地《つきじ》本願寺裏から明石町《あかしちょう》にかけて、厳重な非常警戒網が布《し》かれた。
しかし制服の警官はたった二人だけ、あとはみな私服の刑事ばかりが十四、五人。寝鎮《ねしずま》った家の軒端《のきば》や、締め忘れた露次《ろじ》に身をひそめて、掘割ぞいの鋪道に注意力をあつめていた。
一体なにごとが始まるのだろうか。
「おい、来たぞ」
「来たか。通行人はどうだろう」
「あっ、向うの屋上から青灯《あおとう》をたてに振っている。幸《さいわ》い通行人は一人もない
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