というのだ」
「うむ、うまくいったな」
警官たちの顔つきは、緊張そのものであった。
誰がやって来たというのだろうか。
本願寺裏の掘割ぞいの鋪道の方へ、ふらふらと千鳥足の酔漢《すいかん》がとびこんで来た。
「うーい、いい気持だ。な、なにもいうことはねえや。天下泰平とおいでなすったね」
取りとめもない独白《ひとりごと》のあとは、鼻にかかる何やら音頭の歌い放し。
すると、その後からまた一人の男が、同じこの横丁にとびこんできた。
前の千鳥足の酔漢は、小ざっぱりしたもじり外套《がいとう》を羽織《はお》った粋《いき》な風体《ふうてい》だが、後から出てきたのは、よれよれの半纏《はんてん》をひっかけた見窶《みすぼら》しい身なりをしている。
大道《だいどう》も狭いと云わんばかりに蹣跚《よろめ》いてゆく酔漢の背後に、半纏着の男はつつと迫っていった。
「あっ、な、なにをする――」
と酔漢が愕《おどろ》きの声をあげるところを、半纏着の男は酔漢の襟《えり》がみつかんで、ずでんどうと鋪道になげとばした。
「うぬ、――」
と起きあがろうとするのを、半纏男は背後から馬乗りになって、何やら棒のようなも
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