な特長があるのであろうか。
帆村の気づいたところは、第一に非常に早乾《はやがわ》きがすること、第二に、固まってしまえば鋼《はがね》のような強い弾力を帯びること、第三に耐熱性に富んでいるらしい非常に優秀な漆喰だった。すくなくとも市場には、こんなに勝《すぐ》れた漆喰が知られていない。
そういう優秀な漆喰をここに敷《し》くという目的は、どういうところにあるのだろうか。
普通の機械工場なら、こんな漆喰を塗るまでもなく、その下のコンクリート土台だけで十分であった。贅沢《ぜいたく》な場合でも、その上に僅かのアスファルトを流しこめばいいのだ。それにも拘《かかわ》らず、普通以上の強靭《きょうじん》さを漆喰で持たせようというには、何か訳がなければならぬ。この平々坦々《へいへいたんたん》たる床の上に、そも如何なる物品が載るのであろうか。帆村はせっせと鏝を動かしながらもそれを想って、何とはなく背中がぞくぞくと寒くなるのを覚えた。
その日の所見を、その後、某大官の前で、帆村は次のように報告している。
「なんとかしてその漆喰の見本を、せめて定性分析の出来るくらいの少量でも持ってこようと思いましたが、監視
前へ
次へ
全42ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング