だ。
帆村は、頭を掻《か》きながらぺこぺこ頭を下げた。いかにも職人らしい風を装《よそお》って。
ようやく婆さんの信用をかちえて、一行は歩きだした。やがて着いたところは、ごみごみした横丁にあるバラック建ての婆さんの家だった。その中に入ってゆくと、土間伝いに裏に抜けるようになっている。そこにまた一つの潜《くぐ》り戸があって、それを婆さんが開けてくれた。
そこを潜ると、黴《かび》くさい真暗な倉庫の中に出る。妙なところへ連れこまれたなあと思っているうちに眼が暗《やみ》になれてくる。するとこのだだっ広い倉庫の中に、牛乳を搬《はこ》ぶのに使うような一台の箱型トラックが置いてあるのに気がついた。
すると何処からともなく人が出てきて、この運転台に乗った。別の人が、ぱっと五|燭《しょく》の電灯をつけた。その人は妙な形の頭巾《ずきん》をもっていて、それを五郎造の率いる一行の一人一人の頭の上からすぽりと被《かぶ》せた。
帆村もとうとうこの頭巾を被せられてしまった。息のつまるような厚い布で出来た嚢《ふくろ》だ。頸《くび》のところでバンドを締め、御丁寧にがちゃんと錠がかかった。こうして置けば、いくら頭
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