られていた。
親方の五郎造が最後にやってきた。それでこの南千住の終点に集まる六人組の顔が全部そろったのであった。五郎造は、探偵帆村の化けこんでいるのとも知らず、正太と名乗るこの新入りの左官のことを、これは自分の女房の従弟《いとこ》だ、どうか仲よくしてやってくれと、他の仲間に引合わした。
帆村探偵は、それから先どうなるのかと、ひそかに好奇の眼を光らせていると、やがて十分も経ったと思う頃、
「やあ、来た来た」
と仲間の一人がいうので、その方を見ていると、一人のよぼよぼの婆さんが怒ったような顔をして一行に近づいてきた。
「――おう親方、吉治がいねえじゃねえか」
と、婆さんは伝法《でんぽう》な口を利いた。
「うん、そのことだよ。実は――」
といって、親方はまた吉治が不慮《ふりょ》の怪我《けが》で入院したことから、その代りに女房の従弟の正木正太を連れて来たが、この人物は保証するというようなことを、婆さんの耳許《みみもと》に噛《か》んでふくめるように説明しなければならなかった。
「おい、大丈夫かい。間違いはなかろうね」
と婆さんは、眼をぎょろりと光らせて五郎造と帆村探偵とを睨《にら》ん
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