なった。飛行機、爆弾、燃料、食糧、被服などは、どの倉庫にも一杯になって、中には急造バラックの中に抛《ほう》りこまれているものもある。某大国は明かに日本に対して攻撃姿勢をとっているのだ。わが帝都《ていと》をはじめ、各地の重要地点を一挙にして空爆しようと思ってその機会を狙っていることは実に明かである。しかもこの際最も注意を要することは、かの老獪《ろうかい》なる某大国の作戦計画として、開戦の最も初期において帝都における諸機関を一挙にして破壊し去ろうとしているらしい。われわれの知りたいのは、かの某大国がいかなるところを狙っているかということだ。それが分れば、敵の今後の戦略がかなりはっきり見当がつこうというものだ。帆村君。この際、君の奮起を望むというのも、一《いつ》にこの点に皇国の興廃《こうはい》が懸《かか》っているからだ」
この話で見ると、某大国はキューピーの面を被《かぶ》りながら、その面の下でもって恐ろしい牙を鳴らしているとしか思われない。
こうして某大国の戦意ははっきり読めるのであるが、早く知らなければならないことは、これから某国がとろうとしている実際の攻撃計画がどんなものであるかとい
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