の式場で、これをお目に懸けられるわけでございますが、あとは卓越した日本の土木建築家の手によりまして、足場を組んで建てていただくつもりでございます」
などと挨拶《あいさつ》放送をやって、全国民をまた一入《ひとしお》感激させたのであった。
その忠魂記念塔は、今ではS公園内に天空《てんくう》を摩《ま》して毅然《きぜん》と建っている。そして市民たちは、毎日のようにこの新名所の前に集まってきて、かつて欧州の野に赤き血潮を流した勇敢なる日本義勇兵の奮戦ぶりを偲《しの》んで、泪《なみだ》を催《もよお》しているのであった。
そして今では、一般国民の某大国に対する感情も以前とはことかわり、たいへん穏《おだや》かになったのであるが、果して某大国はわが帝国に心からなる敬愛を捧げてくれているのであろうか。
いや、それは残念ながら、そうではなかったようである。たとえば今、外国密偵団の監視をやっている有名な青年探偵|帆村荘六《ほむらそうろく》が、数日前その筋から示唆《しさ》をうけた話の内容について考えてみるのが早わかりがするであろう。
「某大国の南太平洋における防備は、わずかこの半年の間に、従来の五倍大に
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