やく態度を豹変《ひょうへん》し、内面はともかくも表面的には中国に対する同情をひっこめ、そしてひたすら日本の御機嫌をとりむすぶように変った。それはまるで小皺《こじわ》のよった年増女のサーヴィスのように、気味のわるいものだった。
その年の秋が冬に変ろうという十一月の候、例の某大国は日本国民の前にびっくりするような大きな贈物をするというニュースを披露《ひろう》した。それはかつて欧洲大戦の砌《みぎり》、遥々《はるばる》欧洲の戦場に参戦して不幸にも陣歿したわが義勇兵たちのため建立《こんりゅう》してあった忠魂塔と、同じ形同じ大きさの記念塔をもう一つ作って、わが国に贈ろうという企《くわだ》てであった。
正直なところ、わが国民は某大国のこの好意に面喰《めんくら》った。何につけ彼《か》につけ日本の邪魔ばかりをしている憎い奴だと思っていた某大国から、この由緒《ゆいしょ》ある途方もない大きな贈物をおくられて、愕《おどろ》かぬ者があろうか。
その忠魂塔は東京市に建てられることになった。そのために市の吏員は、敷地を公園にもとめて探しまわった結果、S公園内に建てるということに決った。そして大急ぎでもって御影
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