がない。ピート一等兵は、天井の方をむいて、口を大きくひらいた。
「こら、もっと下を向いて、口をあけろ」
「下へ向けないであります。さっきから首の骨が、どうかなったのであります。幽霊のことを、あまり心配したせいであろうと思います」
「つべこべ、喋るな。命令どおりすればよいのだ。――もっと下へむけ。それから、号令とともに、大きく、息をはきだせ。さあ、はじめる。お一イ」
 ピート一等兵は、泣きだしそうな顔をしている。
「はあッ」
 と、申しわけみたいに、小さい息をはく。
「こら、そんな息のつき方では、だめだ。まるで、お姫様が吐息をついているようじゃないか。もっと大きく息を、はきだせ。こういう風に。お一イ、はあ※[#感嘆符二つ、1−8−75] 二イッ、息をはあ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
 軍曹は、いじわるい笑いをうかべて、ピート一等兵のよわっている顔をみあげた。
「軍曹どの。もう、たくさんであります。あれは、自分のしらないうちに、林檎が胃袋の中へ、とびこんだのであります」
 大男のピート一等兵が、べそをかいているところは、なかなかおもしろい。
 軍曹は、やっと、思いのとおりにいって、気
前へ 次へ
全117ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング