た部屋があった。中では、わあわあと、元気な人の声がしていた。
「ゲームは、おれの勝だ。あとは誰かと入れかわろう」
「中尉どの、わしが出ます」
「おう、ピート一等兵か。お前、やるのか。めずらしいのう」
「いや、さすがに気長のわしも、もうこの部屋の生活には、あきあきしましたので、なにかかわったことをしたいというわけです」
「あははは、ピートが、とうとう陥落《かんらく》したぞ。この部屋を呪《のろ》わない者は、一人もなくなったよ、あははは」
 カールトン中尉が、大きなこえで、笑いだした。
「全く、永い航海だ。外は見えないし、新聞も来ないし、そしてこのとおり波にゆすぶられ通しでよ、これであきあきしなかったら、どうかしているよ」
「そういえば、今日は、ばかに揺れるじゃないか。そして、すこし冷えるようだね」
 三十人ばかりのアメリカ陸軍の将兵が、スチームのむんむんする部屋で、トランプにうち興じているのであった。
 彼等は、籠《かご》の鳥にひとしかった。いや籠の鳥なら、籠の外に陽《ひ》がさしているのも見えるし、猫が窓のところを通るのも見えることがあった。しかし、この無名突撃隊の隊員たちには、船内をぶち
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