ない。船長をよんでくれたまえ」
「はあ、船長ですね」
船長が代って、電話をきいた。
「一等運転士のいうとおりですよ、全くどうにもなりません」
「船長の見込みでは、アーク号は、いつ到着するのかね」
「全く、わかりません。天の神様にでも、うかがってみなくてはなりません」
「おい、子供にお伽噺《とぎばなし》をしているんじゃないよ。はっきりしてくれたまえ、はっきり。こっちは、アメリカ連邦の興廃について、責任を感じているんだからな」
「でも、こればかりはどうも」
「では、仕方がない。こっちから、別の汽船か軍艦を迎えにやることにしよう」
「それは、どうも。迎えていただいても、貨物の積みかえにはどうにもなりませんよ」
「そうだ、その船につんでいる貨物が、明日中にこっちへ到着しないと、せっかく二年間を準備に費した大計画が、水の泡《あわ》になってしまうのだ」
少将の声は、気の毒なほど、悄気《しょげ》ていた。一体リント少将は、アーク号の積荷の、どんな品物を待ちわびているのであろうか。
無名突撃隊《むめいとつげきたい》
アーク号の船内に、「船長の許可なくして入室を禁ず」と貼《は》り紙をし
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