ゃんとしながら、からだはいうことをきかないのであった。
「うーん、あ、たたたたッ」
「とめ、とめ、とめ、とめてくれたか」
と、うわごとのようなことを、二人は、とめどもなく喋《しゃべ》りちらす。二人が、傾斜した車内に、半身を起してあぐらをかくまでには、十七、八分もかかった。
「おい、ピート一等兵、だらしがないぞ」
パイ軍曹は、自分のことは棚《たな》にあげて、兵を叱りつけた。
「はい、軍曹どのが、あれから今まで、一度も号令をかけてくださらないものでありますから自分もつい休めをしていたのであります」
「なにをいうか。頭に大きな瘤《こぶ》をこしらえて休めもないじゃないか」
「いや、これも、軍曹にならったわけでありますが、さすがに上官の瘤は、自分の瘤よりも、一まわりずつ大きいのでありますな」
「ばかをいえ」
こう、へらず口が、どんどん出るようでは軍曹も一等兵も、瘤こそ作ったが、まず元気はもとにもどったものと思われる。
「おい、ピート、水が飲みたいが、水を持ってこい」
「はい、どこから、持ってきますか」
「……」
軍曹は、へんじをするすべを知らなかった。ここは、どうやら深い海底のように思わ
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