を出せッ」
「もう一ぱい出ています」
「そこを、もっと出せ!」
「ううッ。あッもう駄目だッ」
ピカピカピカッと白い閃光《せんこう》が、雷《いなずま》のように目を射た。ガラガラガラッという天地が崩れるような大鳴動と共に、地底機関車はゴム毬のように跳《は》ね返《かえ》された。キッキッキッ。ドン、ガラガラガラ。すさまじい鳴動は続いた。すわ、なにごとが起ったのだろう?
*
その翌朝、東京中は大騒《おおさわぎ》でした。日本橋のあの十階建の東京百貨店が一夜のうちに見えなくなったのです。
なにしろ、一夜明けると、城廓《じょうかく》のような大建築物が地上から完全に姿を消してしまったのだから、驚くのも無理はない。
黒山のようにたかった人々は目を何遍《なんべん》もこすって胆《きも》をつぶした。
百貨店ビルディング紛失事件!
消えたビルディング
そうこうしているうちに、百貨店の消えたその敷地の一点がムクムクと動き出した。
「オヤッ。何か出たぞオ」
といっている群衆の目の前に、大砲弾の鼻さきのようなものが持ち上って来た。それは見る見る大きくなって、小山のような芋虫の化物み
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