たいなものが現れた。
「うわッ、怪物だア……」
それッというので、人々は我勝《われが》ちに逃げ出した。しかしやがて、怖《こわ》いもの見たさで、またソロソロと群衆は引きかえして来た。見ると、変な形をしたものの蓋が開いて、そこから可愛らしい少年の顔が覗《のぞ》いているではないか。
そこへ矢のように駈けつけて来た一台の自動車。中から現れた一人のキリリとした紳士は、少年を見つけると、ツカツカと近づいた。
「三吉、大手柄だったね」
これは三吉の地底機関車が東京百貨店跡から地上に顔を出したのであった。
「ああ、帆村先生!」
それは、いままで外国にいたとばかり思っていた三吉の師、帆村荘六だった。
「岩はどうした」
「……」
少年は黙って短いロープの端《はし》っこを見せた。そこは滅茶滅茶《めちゃめちゃ》に引き裂かれていた。あの地底の大地震に、ロープが切断され「岩」は、とうとう地中に埋められ、地中魔変じて地中鬼と化したのであった。それは悪をたくらむ者の、行きつく道だった。
吹上げられた地中突撃隊
「先生、これは一体どうしたというのでしょう」
三吉は不審の顔を、師の方へ向けた。
前へ
次へ
全56ページ中54ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング