」
と立ち上ろうとした岩は、その瞬間、ロープが足に結びついていることを忘れていたので、立ち上るが早いか、ロープに足を搦《から》まれ、あッという間に身体の中心を失った。
「うわーッ」
と叫び声を残すと、岩の身体は、もんどりうって、車外へ飛び出した。
「ざまア見ろッ」
と子分があざ笑う、その鼻先へニューッとピストルの銃口が……。
「あッ――て、てめえは……」
「小僧探偵の三吉だ。神妙《しんみょう》に、向うを向いてそのまま地底機関車を走らせるんだ。そしてあの現場へ急がせろッ」
あの現場とは、三吉の当てずっぽだった。そういえば、うまいところへ連れてゆくだろう。外では「岩」が全速力の機関車にひきずられて、眼も口も泥まみれになって、虫の息だった。地底機関車は、マンマと三吉少年に占領されてしまった!
地底の大鳴動
「間に合うか?」
とピストルの銃口を向うにして三吉は声をかけた。
「さア、もうあと三十秒です」
「もっと速力を出すんだッ」
轟々《ごうごう》たる音響をあげて、真暗な地中を地底機関車は急行した。
もう二十秒、十秒、五秒……。
「地底機関車は壊れてもいい。もっと速力
前へ
次へ
全56ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング