ね」
「な、なにをッ」岩は子分をピシャリとぶんなぐった。「無駄をいわねえで全速力でやれッ」
 子分は見る見る面をゴム毬《まり》のように膨《ふく》らませたと思うと、起動桿《きどうかん》をグッとひいた。地底機関車は、獣のような呻《うな》り声をあげて、徐《しず》かに動き出した。――三吉はヒラリと、車の背後に飛びついた。


   全速力の地底機関車


 泥土《どろつち》や岩石は、渦を巻いて飛び散り、物凄い響に耳はきこえなくなるかと思われた。
 岩は機関車の出入口に近く、向うを向いて膝小僧を抱《かか》えていた。彼は、
「見ろよ見ろ、見ろ」
 と、呪《のろい》の声を発しつづけていた。
 三吉はじりじりと匍《は》いながら、前進した。彼は岩の足首を縛っているロープの端《はし》っこをつかんだ。
(見ろよ見ろ、見ろ!)
 彼は、岩の独言《ひとりごと》を真似して、口中でいった。
 ロープの端っこは、素早く機関車の鉄格子《てつごうし》に結びつけられた。
「もっと速力を出さねえか、コノ愚図野郎め」
 岩は運転をしている子分の腰のところを蹴った。
「あッ痛テ。なにを親分……」
「き、貴様、おれに反抗する気かッ
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