て見る地底機関車だった。
 芋虫《いもむし》を小山ぐらいの大きさにした奇妙な姿の地底機関車だった。全体はピカピカと、銀色に輝いていた。車体の前半分は、鯨でも胴切《どうぎ》りに出来そうな大きい鋭い刃が、ウネウネと波の形に植えつけられてあった。これがブーンと廻転を始めると、土は勿論《もちろん》、硬い岩石でも、鉄壁《てっぺき》でも、コンクリートでも、まるで障子《しょうじ》に穴をあけるのと同じように、スカスカ抉《えぐ》られてしまうのだった。なんという不気味《ぶきみ》な、いやらしい恰好の地底機関車だろう!
 車体の後半分は、普通の汽車の運転台と大した変りはなかった。
「よいしょッ!」
 と子分は飛びのって、運転手の席についた。岩も続いて乗りこんだ。
「親分、なんです。その足のところに捲《ま》きつけている長いものは……」
「これか」岩はチェッと舌打《したうち》をした。「小僧に捲きつけられた鋼《はがね》のロープだが、上の鉤《かぎ》のところはやっと外《はず》して来たが、あとは足首から切り離そうとしても、固くてなかなか切れやしない」
「そんな長いものを引張《ひっぱ》っていらっしゃるなんて、ご苦労さまです
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