っている一つの恐しい顔! それは紛れもなく「岩」ではないか。しきりに懐中電灯をふっているところを見ると、まだ三吉を見つけていないらしい。道は一本筋の、しかも行き止りの袋路《ふくろじ》だ。見つけられたが最後、三吉の生命はないものと思わねばならぬ。
一番下の階段に、少年の身体が僅かに隠れる程の、隙間があった。三吉は、まるで兎が穴へ潜っているような恰好で、その蔭にうつ伏《ぶ》していた。
ギギーッ。三吉の耳許で、突然、金属の擦《す》れ合う音がした。はッと驚いて、頭をあげてみると、いままで岸壁のように揺《ゆ》らぎもしなかった鉄扉《てっぴ》が、すこしずつ手前の方へ開《あ》いてくるのだった。
九死に一生!
扉は重いと見えて、ほんの少しずつ拡がっていった。
「お、親分?」
と三吉の頭の上で、太い声がした。
(もう駄目だッ)
と三吉は思った。敵も敵、岩の子分である。上からは岩が恐しい眼を剥《む》き、下からは逞《たくま》しい子分が腕を鳴らしているのである。三吉の進退は、まったく谷《きわ》まってしまったのであった。
だがしかし、さすがは少年探偵として、師の帆村荘六から折紙《おりがみ
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