トルも下ったときのことだった。突然に彼の頬を、一陣の生温《なまあたたか》い風が、スーッと撫《な》でた。
「おやッ」
袋の鼠か?
(なんだろう?)
三吉は懐中電灯をパッと照らしてみた。するとそこには真四角な窓みたいなものが、壁のところにポカリと開いていた。生温い風が、その窓からスーッと吹いてきた。
(どこから風が上ってくるのだろう。この窓の下には、なにがあるのだろう?)しかしグズグズしている場合ではない!
「よオし、突進だッ」
三吉は自分で自分を励《はげ》ますように叫んで、その窓の中へ入っていった。内部には誰が拵《こしら》えたのか階段があった。少年は、薄明るい懐中電灯の光を頼りに、ゴム毬《まり》のようにトントンと階段を下っていった。
階段は間もなく尽《つ》きた。そしてそこには、重い鉄の扉が行手を遮《さえぎ》っていた。
そのとき突然、頭上からピカリと強い光が閃《ひらめ》いた。
「おッ」
と三吉は身を縮めると共に、上を見上げた。ああ、どうしたというんだろう。さっき三吉の潜りこんだ窓が、真四角にポッカリ明るくなっている。そしてその窓口から、しきりに三吉の方を窺《うかが》
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