いやというほど殴《なぐ》った。「さあ引返せッ」と隊長が呶鳴《どな》った。すわ何事が起ったのだろう。


   生埋《いきうめ》の一行


「うわーッ、たいへんだッ」
「どうしたどうした」
「今通った道が崩《くず》れて、帰れなくなった」
「なに帰れない」大辻老の顔色は紙のようにあせた。「帰れないとたいへんだ。早く掘って穴をあけといて下さい」
 しかし隊長は一向号令を下さない。さすがは捜査課長だ。這《は》いつくばって崩れた土の臭《におい》を熱心に嗅《か》いでいるのだ。
「おお、ダイナマイトの小型のを仕掛けた者がいる。油断をするなッ」
「大丈夫です。大丈夫です」と一同。
「ダッ、ダイナマイトですって」大辻老は気が変になった鶏のように、一人でバタバタ跳《は》ねかえっている。
「崩れた箇所はあのままにしておいて、一同前進!」隊長は勇ましい号令を下した。
 だッだッだッと、一行は小さく固まって、懐中電灯をたよりに、低い泥の天井の下をドンドン前進した。
「左、左、左へ曲れ」
「オヤ道が行きどまりだ。おかしいぞ」
「うん、これは一杯|食《く》ったかな――集れッ」
 と隊長の号令だ。
「番号」
 一チ、
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