もぐら》のように(というと変だが)、明暗《めいあん》もわからぬ地中にもぐりこんだ。始めは腹這《はらば》って、やっと通れるくらいの穴が、先へ行くにつれ大きく拡がってきた。おしまいには、楽に立ってあるけるようになって、持ちこんだ穴掘機械が邪魔なくらいだった。
「さあ、こんどは穴が北に向いたぞ」
 と磁石をしっかり手に持った大江山警部が叫んだ。
「はあ、もうこれで横浜の北東を十キロも来ました」
 と測量係の警官が報告をした。こうして一行は今どの辺の位置にいるのかを、地図の上に鉛筆のあとをつけながら、たゆまず前進をつづけた。――しかし一向に、「岩」にも出会わなければ、その子分手下にもぶつからない。
「ねえ大江山さん」と大辻が後から声をあげた。「岩の奴は、あの大金を持って、外国へずらかったんじゃありませんか。それとも私達に恐《おそれ》をなしたのか、さっぱりチュウとも鳴きませんぜ」
 大辻老は、岩を鼠かなんかと間違えていた。一行の気がすこしゆるみかけた。丁度《ちょうど》そのときだった。
 どどーン、ぐわーン。いきなり恐しい物音が、後の方にした。ハッと思う間もなく、恐しい風が一同の横面《よこつら》を
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