二イ、三ン……。
「オヤ一名足りないぞ。誰がいなくなったのだッ」
 確かに一名足りない。どこへ消えたというのだろう。その足りない男については、誰もかもどこの誰だかハッキリ知らなかった。一同は心臓をギュッと握られたように、無気味《ぶきみ》さに慄《ふる》えあがった。


   岩のいた証拠


「オイ大辻君。君の大事にしている足型は、こういうときに使わなくちゃ、使うときがないよ。ちょいと貸したまえ」
「イヤイヤイヤイヤ」と大辻は仰山《ぎょうさん》にその手を払いのけた。「探すのは、わしに委《まか》せなさい。貸すくらいなら、壊した方がましだ」
「そんな意地の悪いことをいわないで……」
「どいたどいた、わしが探す。ホラ皆さん、足を出して……」
「失敬なことをいうな」
 そんなにまで騒いだが、一名|欠《か》けた残《のこり》の十名の中には岩は絶対にいないことが解った。
「いませんよ。大丈夫です。隊長さん」
「じゃ、今まで来た軟かい道の上から行方不明の警官の足跡を探して、調べてみたまえ」
「はいはい」
 大辻老は向《むこ》うへ懐中電灯をたよりに引返《ひっかえ》していった。そしてしきりと路上にかがまって
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