珍探偵大辻だった。
「オイ三吉どん」と大辻が真赤な顔をしていった。「僕等もこの地中突撃隊に参加させて貰おうじゃないか。この方が岩をとッ捕《つか》まえる早道だぜ」
「そうだね」と三吉は例の調子で黒い可愛い眼玉をクルクルさせていたが「僕は反対するよ」
「なに反対をする。この弱虫め!」
「僕はいままで探偵してきたことを続けてゆく方がいいと思うんだ」
「なんのかんのというが、実はこわいのだろう。わし[#「わし」に傍点]はそんな弱虫と一緒に探偵していたくはないよ。帆村先生が帰って来て叱《しか》られても、わし[#「わし」に傍点]は知らぬよ」
「叱られるのは大辻さんだよ」
「いや、もう弱虫と、口は利かん」
とうとう三吉と大辻とは別れ別れになってしまった。
大辻老は決死隊に参加を許されると、いよいよ大得意だ。ふんぞりかえって、自動車に乗っている。ナポレオンのような気持らしい。しかも岩の足型を大事に小脇に抱えている。
「大辻さん。その足型を壊《こわ》しちゃ駄目だよ」
「なアに大丈夫……おっとッとッ。お前とは口を利かぬ筈《はず》じゃった」
仕度は出来た。突撃隊の自動車は一列に並んで出発した。横浜正金
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