「気を付けッ」大江山捜査課長は九人の決死隊員を並べて号令をかけた。九人が九人、いずれも強そうな立派な体格の勇士ばかりだ。この中に岩が紛れこんでいては大変と、課長は一同をズラリと見廻したが、誰もかもチャンとしていた。
(まず安心だ)
 と課長は心の中で思った。しかし念のために勇士たちの手袋をとって、その手を見ておくとよかったのであるけれど、岩が片手を爆弾でやられたことを知らぬ課長のこととて、それは気がつかなかった。
「穴掘り機械も取りよせてある。ほら、あの自動車に積んであるのがそれだ」
 勇士たちは振りかえって課長の指さす方を見ると、なるほどガッチリした機械が車上に積まれてあった。
「それから、この決死隊のことを地中突撃隊と名付ける。隊長としては、この大江山が先頭に立って指揮をする」
 ああ、大江山課長が進んで決死隊長になるというのだ。これこそ正に警視庁の非常時だ!


   大辻老の参加


 十人の地中突撃隊が警視庁前に勢揃をして、いよいよ勇ましい出陣に移ろうというその時だった。そこへ駈《か》けつけたのは一人の少年と、布袋腹《ほていばら》の巨漢、これはいうまでもなく少年探偵の三吉と
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