銀行さして……。
「はてな」の室町《むろまち》附近
三吉少年は一人残されたが、失望しない。
「すみませんが、ちょっと測《はか》らして下さい」
そういって彼は日本橋|界隈《かいわい》の地下室のあるところを一軒一軒廻っては、携帯用地震計を据《す》えつけて測って歩いた。
「一体、何を測るんだい」
「おじさんの家は大丈夫だということが分るんですよ」
「なにが大丈夫だって」
「それは今に分りますよ。フフフ」
こんな会話をしながら三吉は歩いて廻った。しかし三吉が室町方面に近付くに従って、彼の顔はひきしまってきた。
「はてな」と彼は日本銀行の地下室でいった。
「はてな」と又、東京百貨店の地階でいった。
「はてな」と彼はまた三井銀行の地下室でもいった。
三吉は、その三つの場所で、いつも休みなく伝わってくる小地震を感じた。それは地底のはるかの下から伝わってくるのであって、決して地上からではない。本当の地震はごくたまにやってくる。しかも強くひびくところはごく短い時間だけだ。しかしこの室町界隈では不思議な連続地震が起っている。
「これは何かあるぞ!」
しばらくの間、ジッと考え込んでい
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