のか」と眼をグリグリとさせて「荷物の一部がなくなっているんだ。しかも一番急ぎの大切な荷物が」
「その荷物というのは、なーに?」
「地下鉄会社が買入れた独逸《ドイツ》製の穴掘り機械だ。地底の機関車というやつだ。三|噸《トン》もある重い機械が綺麗《きれい》になくなってしまったんだ」
 不思議も不思議!


   ホラ探偵|大辻又右衛門《おおつじまたえもん》


「地底機関車というのは、素晴しく速力《スピード》の速い穴掘り機械で、今日世界に一つしかないものだそうだ。何しろそれを造った独逸《ドイツ》の工場でも、もう後を拵《こしら》えるわけにゆかない」
「なぜ?」と三吉少年は訊《たず》ねた。
「それを作った技師が急死したからだ」と、ここで大辻老は得意の大眼玉をグリグリと動かした。「地下鉄では青くなっている。是非早く探してくれというんだ。それでわし[#「わし」に傍点]のところへ頼みに来た。ヘッヘッヘッ」
「あんなこといってら。先生に頼みに来たんだよ。誰が大辻老なんかに……」
「ところが、ヘッヘッヘッ。――先生は今フランスへ出張中だ。先生が手を下されることは出来ないじゃないか。そうなれば、次席の名探
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