忽《たちま》ち動き出し、スルスルと天井の中に入って元のようにセードばかりが残った。
 すると側の扉《と》が開いて、洋服を着た小さい力士のような大人が入って来た。グリグリと大きい眼だ!


   地底機関車


「三吉、大事件だ。お前も働かせてやる」
 とグリグリ眼の男はイキナリ言った。
「大変威張ってたね、大辻老」
 と三吉少年は天井を指さして笑った。天井から下りて来ていたのは、この事務所の応接室を覗《のぞ》く潜望鏡のような眼鏡と、その話をききとる電話とだった。客が来ているときは猫の眼が青く光る仕掛だ。
「こいつがこいつが」と老人らしくもないがグリグリ眼の大辻|小父《おじ》さんは、三吉の頸《くび》を締《し》めるような恰好をした。「しかし大事件を頼んでいったよ。芝浦の大東京倉庫の社長さんが来たんだ。昨日の夕刻、沖合から荷を積んでダルマ船が桟橋《さんばし》の方へやって来るうち、中途で船がブクブク沈んでしまった。貴重な品物なので今朝早く潜水夫を下してみたところ、チャンと船は海底に沈んでいた。しかし調べているうちに、大変なことを発見した」
「面白いね」と三吉少年は手をうった。
「なにが面白いも
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