は胸を叩いて独《ひと》り言《ごと》をいった。そのとき天井を仰《あお》いだ拍子に、欄間《らんま》の彫りものの猫の眼が、まるで生きているようにピカピカと青く光っているのに気がついた。
「オヤッ!」
少年は驚きの声をあげた。
怪事件?
三吉少年はコップを下に置くと、テーブルの下を探って釦《ボタン》をグッと押した。すると、天井に嵌《は》めこまれてあった電灯のセードが音もなく、すうっと下りてきた。
だがセードは床から一|米《メートル》ばかりの所でピタリと停った。
見るとセードのあった穴から太い金属の円柱が下りて来た。セードはその円柱の先についているのだ。円柱には二つの穴があった。三吉は眼を穴にあてた。そして円柱の横についているヨーヨー位の大きさの受話器をとって左の耳にあてた。人の話声がする。
「では明日中にどうぞ」
「大丈夫です。不肖《ふしょう》ながら大辻《おおつじ》がこの大きい眼をガッと開くと、富士山の腹の中まで見通してしまいます。帆村荘六の留守のうちは、この大辻に歯の立つ奴はまずないです」
少年はクスリと笑って受話機をかけ、円柱に手をちょっと懸《か》けると、この機械は
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