よ」
 と三吉は真鍋先生の方に向き、
「先生と知らなかったもんで、御免なさい。今私達の追掛けているのは向うにゆく十台の大貨物自動車なんです。あれは――」
「なアんだ、あのトラックかい」先生は眼をパチクリして、「あれなら追掛けてもよろしい」
「へえー」
 二人はむき[#「むき」に傍点]になって、貨物自動車隊を見失うまいとした。暁の街をスピードを早めて追い掛けたが、こっちはボロ自動車であるから、ともすれば遅《おく》れ勝《がち》である。
 敵は深川を離れて京橋から日本橋を経て神田に入り、本郷《ほんごう》の通をグングン進んで行った。そして、やがて速力をおとして入りこんだのが、何と理科大学――。
「ヤレヤレ帰って来たかな」
 真鍋先生は起き上った。
「なアーンだ」
 三吉と大辻とは声を合わせて舌打をした。意地の悪い先生ではある。といってこれで疑問が消えたわけではない。


   エンプレス号の金貨


「金貨百万ドルを積んだエンプレス号、東京湾沖に沈没す。奇怪なる船底の大穴」
 またまた大事件だ。
 このニュースが出たのは、あの日の午前中だった。お昼ごろに、また驚くべき追加ニュースが出た。
「金
前へ 次へ
全56ページ中17ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング