》タクでもつかまえないと駄目だぞ」
「ああ、しめしめ。あっちからボロ貨物自動車がやって来た。オーイ、オーイ」
「オーイ。乗せてってくれよオー」
 やっと二人はボロ貨物自動車を停めることができた。運転手に頼んで、荷物を積みこむ後の函の中へ乗りこませて貰った。
「お礼はたんまりするから、僕のいうように走らせてくれ給え」
「さあそれは――」と運転手は考えていたが、
「一つ中のお客さんに相談して下さいよ」
 中のお客さん? 二人は驚いて後をふりかえって見ると、今まで一向気がつかなかったが、その函の片隅に薄汚い洋服を着た中年の男が、膝小僧《ひざこぞう》を抱えてよりかかっていた。睡っているらしい。


   怪トラックの行方


 睡っていると思った洋服男は、実は睡っていなかった。
「わしは反対じゃ。わしは理科大学の地質学講座を持っている真鍋《まなべ》じゃ。探偵のお伴は御免《ごめん》じゃ。皆下りてくれんか。この車はわしが契約しとるのでな」
「こいつ大きな口を利く男じゃな。畳《たた》んじまった方が早い」
 と大辻は飛びかかりそうだ。
「待てったらお待ちよ大辻さん。この人は先生だから大きな口を利くんだ
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