っている。その時だった。
「はてな?」
 砂地にうずくまっていた少年探偵三吉は、そう呟《つぶや》くとつと立ち上った。


   追跡急!


 三吉の見つめる五百メートル彼方の路に、今しも大きい貨物自動車が、十台ばかり列を組んでユラユラと動きだしているのだった。
「大辻さん、あれを御覧よ」と三吉は後を振返った。
「貨物自動車だね。新品のようだ。あれだけあれば、自動車屋としても結構食べてゆけるがなア」とどこまでも慾が深い。
「あの自動車隊は立派すぎると思わない? 何を積んでいるのかわからないが、皆ズックの覆《おお》いをかけている。どこへ行くんだか検《しら》べてみようよ」
「よし、見失《みうしな》わないように追掛《おっか》けよう。……この潜水服は勿体ないが、ここに捨てておけ」
 二人は空腹《くうふく》を抱《かか》えて一生懸命に駈け出した。幸《さいわい》に例の貨物自動車は、路面の柔いのに注意してか、ソッと動いている。
 四五分経つと、いい舗道《ほどう》へ出たと見えて、自動車隊は速力をグンとあげた。見る見る自動車の姿は小さくなってゆく。
「チェッ。まだ大通へ出られないのかなア」
「早く円《えん
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