貨百万ドル、行方不明となる。潜水夫の報告に係官驚く。魔の海東京湾。国際問題起らんか」
 イヤ大変だ。
 地底機関車が海底に沈んで、それがどこかに見えなくなったという怪事件から、まだ幾日も経っていないのに、又同じような場所で大事件が持ち上った。警視庁の狼狽《ろうばい》ぶりが目に見えるようだ。
 一体誰がやったのだ。どうしてやったのだ。
 理科大学の広い校庭では一面に地盛《じもり》をしている。例の十台の貨物自動車隊から下《おろ》した夥《おびただ》しい土であった。
 この土は月島から掘ってきたもの。真鍋先生はこの地盛を幸《さいわい》に月島へ出かけては、地質の研究に文字通り寝食を忘れている有様だ。金塊事件のニュースが出たとき、三吉と大辻はまた理科大学で地盛を見ていた。二人は号外を両方から引張り合った。
「僕の思っていたとおりの大事件だ。これからはもっともっと凄いことがあると思うよ」
「これは大変なことになった。帆村先生にフランスから帰って頂くことにしてはどうかな」
 大辻は岩の靴型を握る手を震わしながら、いよいよ本音の弱音《よわね》を吐《は》きだした。
「驚くなんてみっともないよ」
 と三吉は
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