この恐ろしい器械群だ」
「吊り籠に若し人間が乗っていたとしても、この窓にばかり降ってくるなどとは考えられない」
「うん。ところがアレを見給え」と辻永は窓から半身を乗り出して頭上を指した。「あすこのところに腕金《うでがね》が門のような形になって突き出ているのだ。あの吊り籠が石炭だけを積んでいたのでは、苦もなくあの下をくぐることが出来るが、もし長い人間の身体が載っていたとしたら、あの腕金に閊《つか》えて忽《たちま》ち下へ墜ちてくるだろう」
「なるほど、そうなっているネ」と私はいよいよ友人の炯眼《けいがん》に駭《おどろ》かされた。
「しかしもう一つ考えなければならぬ条件は、吊り籠に載《の》っていた人間は気を失っていたということだ」
「ほほう」
「気が確かならば、オメオメこんな上まで搬《はこ》ばれて来るわけはないし、若《も》し身体が縛りつけられてあったとしたら、下へは墜ちることが出来なかろう。さア、とにかくあのケーブルが怪《あや》しいとなると、吊り籠の先生、どこから人間の身体を積んできたかという問題だ。下へ降りて石炭貯蔵場まで行ってみようよ」
3
下へ降りてみるとなるほど石
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