大きく嘆息《たんそく》をした。
「すると君は、あの不幸な青年たちが、この器械にかかったというのかネ」
「懸ることもあるだろうと思う程度だ。断定はしない。しかし……」と彼は急に眉を顰《しか》めて窓外を見た。「若《も》しこの窓から人間が入って来ることがありとすればだネ、これはもっとハッキリする」
「なにかそんな手懸りになるものがあるか知ら?」
 私は窓から首をつき出して外を見た。
「呀《あ》ッ!」
 そこの窓から見上げた拍子《ひょうし》に、石炭の入った吊り籠がユラリユラリと頭の上を昇ってゆくのが見えた。
「どうした」と辻永は私の背について窓外《そうがい》を見た。「オヤ、偶然かも知れないが、面白いものがあるネ。ここに通風窓《つうふうまど》があって窓の外へ一メートルも出ている。ホラ見給え、家に近い方の隅《すみ》っこに、小さい石炭の粉がすこし溜っているじゃないか」
「なるほど、君の眼は早いな」
「だからネ、もし石炭の吊り籠の上に人間が乗っていて、それが下へ落ちると、地上へは落ちないでこの通風窓にひっかかることだろう。すると勢いでスルスルとこの室に滑りこんでくることが想像できる。滑りこんだが最後、
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