やは》りビール瓶を自動的に箱につめこむ工場だった。まったくそれは実に大仕掛けの機械だった。一つの大きい軸《シャフト》がモートルに接《つな》がるベルトで廻されると、廻転が次の軸に移って、また別のベルトが廻り、そのベルトは又更に次の機構を動かして、それが板を切るべきは切り、釘をうつべきはうち、ビールを詰め込むべきは詰めこんで、一番出口に近いところにすっかり納《おさま》ったビールの大箱が現われるのだった。
それをすぐにトロッコが待っていて、外へ運び去る。まことに不精《ぶしょう》きわまることながら、便利この上もないメカニズムだった。
「実に恐ろしい器械群だと君は思わんか」
と辻永が感歎の声をあげた。
「うむ、たった一つのスイッチを入れたばかりで、こんな巨人のような器械が運転を始め、そして千手観音《せんじゅかんのん》も及ばないような仕事を一時にやってのけるなんて……」
「イヤそれより恐ろしいのは、この馬鹿正直な器械たちのやることだ。もしこのベルトと歯車との間に、間違って他のものが飛びこんだとしても、器械は顔色一つ変えることなく、ビール瓶と木箱と同じに扱って仕舞《しま》うことだろう」
辻永は
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