める大きな器械がある。これは昼となく夜となく二十四時間ぶっとおしで運転しているもので停めたことはないものだが、それをワザワザ停めても調べてみた。その結果もなんの得るところが無かった。
事件はそのまま迷宮《めいきゅう》へ入った――というのが箱詰屍体事件のあらましである。
2
「ビール会社へ行ってみようよ」
辻永はそういうが早いか、駅の門の方へスタスタ歩きだした。私は依然《いぜん》お伴《とも》である。
円タクを値切って八十銭出した距離に、そのビール会社の雲をつくような高い建物があった。古い煉瓦積みの壁体《へきたい》には夕陽が燃え立つように当っていた。遥《はる》かな屋根の上には、風受けの翼《つばさ》をひろげた太い煙筒《えんとつ》が、中世紀の騎士の化物のような恰好をして天空《てんくう》を支《ささ》えているのであった。その高い窓へ、地上に積んだ石炭を搬《はこ》びこむらしい吊《つ》り籠《かご》が、適当の間隔を保って一《ひ》イ二《ふ》ウ三《み》イ……相当の数、ブラブラ揺《ゆ》れながら動いてゆく。
待つほどもなく、私たちは工場の中へ案内せられた。特に見たいと思ったのは、矢張《
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