きま》に五ダースも入ろうという大量入りの木箱だった。
 事件を並べてみると、不思議な共通点があった。第一に、屍体の主《ぬし》はいずれも皆、若いサラリーマンや学窓《がくそう》を出たばかりの人達だった。第二にいずれも東京市内の住人《じゅうにん》だったのも、大して不思議でないとしても、不思議は不思議である。但《ただ》し三人の住所は近所ではなくバラバラであった。第三に三人の屍体は同様の打撲傷《だぼくしょう》や擦過傷《さっかしょう》に蔽《おお》われていたが、別にピストルを射ちこんだ跡もなければ、刃物《はもの》で抉《えぐ》った様子もない。もう一つ第四に、三人とも殺されるほどの事情を一向持っていなかったということ。それからこれは附《つ》け足《た》りだが、三人が三名とも名刺入れをもっていて、直ぐに身許《みもと》が判明したそうだ。
 ビール会社では、こんな青年の屍体が、どうして箱の中に入っていたか判らないと弁明《べんめい》した。その工場の内部を隅々まで調べてみたが、そんな青年達の忍びこんでいたような形跡《けいせき》は一向《いっこう》見当らなかった。ビール瓶に藁筒《わらづつ》を被《かぶ》して自動的に箱につ
前へ 次へ
全26ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング