の手腕《しゅわん》に嫉妬《しっと》を感ずるほどだ。
「これだこれだ山野《やまの》君」と彼は私の名を思わず大きく叫んだ。「例の箱がいつ何処《どこ》で作られたんだかすっかり判っちまったよ。第一回の箱は七月四日の製造だ。第二回目のは七月十八日の製造だ。そして第三回目のは今から一週間前、実に八月八日の製造だということが判ったよ」
「そりゃどうして?」私はすっかり駭《おどろ》いた。
「ナニこれは殆んど努力で判ったのさ。今日は箱の山がどんな形に、どんな数量を積み重ねてあるかを知りたかったのだ。あとは発送簿《はっそうぼ》の数量を逆に検《しら》べてゆくと、あの箱を積んだ日、随《したが》ってあれを製造した日がわかるという順序なんだ」
 よくは呑みこめなかったけれど、やっぱり頭脳の冴《さ》えた辻永だと感心した。
 例の箱とは、前後三回に亙《わた》って発見された有名なる箱詰屍体《はこづめしたい》事件の、その箱のことなのである。
 細かいことは省略するが、その三つの屍体はすべて此《こ》の貨物積置場に積まれてあったビール箱の中から発見されたのだった。その箱は人間の身体がゆっくり入るばかりか、ビールがその隙間《す
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