っちも探偵趣味に生くる者同士だったからであった。しかし正直のところ辻永は私よりもずっと頭脳《あたま》がよかった。彼は私を事件にひっぱりだしては、頭脳の働きについて挑戦するのを好んだ。それは彼の悪癖《あくへき》だと気にかけまいとするが、時には何か深い企《たくら》みでもあるのではないかと思うことさえあった。
「オーイ。こっちだア――」
思いがけない方角から、辻永の声がした。オヤオヤと思って、声のする方に近づいてゆくと一つの古ぼけた建物があった。それをひょいと曲《まが》ると、イキナリ眼前《がんぜん》に展《ひろ》げられた異常な風景!
夥《おびただ》しい荷物の山。まったく夥しい荷物の山だった。山とは恐らくこれほど物が積みあげられているのでなければ、山と名付けられまい。――さすがは大貨物駅《だいかもつえき》として知られるS駅の構内《こうない》だった。
辻永は大きな木箱《きばこ》の山の側に立って、鼻を打ちつけんばかりに眼をすり寄せている。早くも彼氏、何物かを掴《つか》んだ様子だ。小説家と違って本当の探偵だけに、いつでも掴むのがうまい。あまりうまいので、私はときどき自分が小説家たることを忘れて彼
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